広域分布種の生活史特性に対応した保全管理戦略の立案


広域に分布する野生生物を対象に、生息状況と生活史に対応した保全管理策を立案する研究に取り組んでいます。主に、1)各地で減少する普通種の減少要因や分布拡大した侵略的外来種の増加要因の特定、2)広域的な生息状況把握と保全優先度の高い地域の抽出、3)生活史や個体群動態の記載に関する研究に取り組み、各種の生活史戦略に適した対策を地域ごとに提案していきます。 加えて、4) 近縁種間の排他的分布を規定する環境要求性と種間相互作用の解明にも取り組んでいます。

 

これまでは、日本広域に分布するカメ類モデルとした研究に取り組んできました。今後は、カエル類、トカゲ・ヘビ類、ナマズ類カニ類やトンボ類等と幅広く扱っていく予定です。


主な研究テーマ

複数の人為的要因が野生生物に与える複合的な影響の評価と対策



多くの野生生物は生息地の消失、外来捕食者や競合種、商業目的の乱獲や気候変動等の様々な人為的要因による影響を受けて減少しています。これら複数存在する人為的要因は複合的に組み合わさることで、野生生物に対してより大きな影響を与えます。そのため、適切な保全対策を検討する上で、在来種を減少させる主要因と各要因間の関係性(直接効果と間接効果)、相対的な重要性を包括的に把握することが求められています。

 

そこで、生息地の消失などの非生物的要因や外来捕食者・競合種などの生物的要因が在来種に与える影響を網羅的に評価し、在来種を回復させる上で優先的に改善すべき主要因を明らかにする研究に取り組んでいます。得られた結果をもとに適切な保全策を提案及び実施し、対象種を環境収容力まで回復させることを目指しています。


種分布モデルを用いた生物多様性の広域評価と保全計画立案



様々な人為的要因によって急速に低下する生物多様性を効率的に保全する上で、現状を広域的に評価し、保全上重要な地域の把握や保全区域の優先順位付けを行うことは、早急に行うべき必須な課題です。

 

現在、生物の分布情報や地理情報システム、統計モデリング(種分布モデル)を用いて、断片的な情報から野生生物の分布域や個体数、種多様性の高い地域を広域的に予測(地図化)する研究に取り組んでいます。得られた結果をもとに、優先的に対策を実施すべき地域を抽出し、保全地域の優先順位付けや実施すべき対策の提案を行っていきます.


生活史戦略と個体群動態の記載及び保全管理への活用



野生生物の適切な保全や防除対策を検討する上で、生活史に関する基礎情報の収集は必須な課題です。しかしながら、多くの種ではこのような情報は不足しています。

 

そこで、私は標識再捕獲法等による野外調査を通して、野生生物の分布、成長、繁殖、生存率等の生活史形質や個体群動態に関する基礎的な情報を収集し、各種の生活史の解明を目指した研究に取り組んでいます。得られた情報を有効に活用し、各種の生活史戦略に合致した適切な対策を提案していくことが目標です。



近縁種間の排他的分布を規定する環境選好性と種間相互作用



近縁種間にたびたび見られる排他的な分布パターンが形成されるプロセスを明らかにするために、環境選好性の違いと種間相互作用メカニズム(例えば、種間競争、繁殖干渉、捕食)の2点に着目した研究を進めています。